遺伝性血管性浮腫(HAE)ってどんな病気?
遺伝性血管性浮腫(HAE)とは
HAEは、体のいたるところに一過性の「腫れ」を繰り返す病気です。
腫れは、血管の中の水分が血管の外にしみ出すことによって起こります。
HAEの原因の多くは、生まれつきC1-INH(C1インヒビター)という体内のたんぱく質が「不足している」または「うまく働かない」ことが原因です。
C1-INHは、血管の中から水分がしみ出すのを防ぐ“ストッパー”のような役割をしており、これがうまく働かないと血管から水分がしみ出して腫れが起こります。
C1-INH(C1インヒビター)とは
C1-INHは「炎症のスイッチ」が入りすぎないように止める役割を担っており、体内でブラジキニン(炎症の原因)という物質が増えないように調整しています。そのため、C1-IHNが足りなかったり働かないと、血管から水分がしみ出しやすくなり、その結果、顔・のど・手足・お腹などが突然腫れて発作が起こります。

腫れる場所によってさまざまな症状が出ます。
皮膚だけでなく、腸やのどなどの目に見えない場所にも腫れが起こります。

突然起こる腫れはどのようにして起きているのか
さまざまな誘因により、体の中にブラジキニンという物質が過剰に産生されます。
このブラジキニンの作用により、血管内の水分が血管の外にしみ出し、腫れが起こります。
腫れは発生後、約24時間で最大となります。その後、数日間かけて自然に腫れやむくみ(浮腫)は引いていきます。


HAEの腫れに関係するブラジキニンとは?
ブラジキニンには、血管に作用し、血圧や血管のすき間を調節する働きがあります。
ブラジキニンが増えすぎると、血管のすき間からたくさんの水分が血管外にしみ出し、「腫れ」を引き起こします。
そのため発作が現れたら、なるべく早く注射や飲み薬による発作治療を行い、ブラジキニンが増えないようにするなどの対処が必要です。
突然の腫れ(急性発作)の原因となる因子
急性発作の誘因として下記の因子があります1,2)。一方で、誘因が特定できない発作も数多くあることが知られています3)。
- ●外傷
- ●ストレス
- ●歯科手術
- ●感染症
- ●妊娠中や経口避妊薬を服用されている場合
※ エストロゲン(女性ホルモンの一つ)という物質が増加することで発作が起こりやすくなります。
- 1) Jaiganesh T, et al. Eur J Emerg Med. 2013;20(1):10-17.
- 2) Gill P, et al. Immunol Allergy Clin North Am. 2017;37(3):449-466.
- 3) Zotter Z, et al. Orphanet J Rare Dis. 2014;9:44.
急性発作が起こる前に以下のような症状が出ることがあります(前駆症状)
急性発作の前駆症状・初期症状として、以下の症状があらわれることがあります。
- ●皮膚表面がピリピリする感覚
- ●いらいら
- ●しびれ
- ●頭痛
- ●環状紅斑(盛り上がっていない皮疹)
- ●吐き気、胃痛、空腹感
- ●疲労感、倦怠感
- ●筋肉痛
もしこのような症状を感じた時には体の中では水漏れ(発作)が起こっている可能性があります。
我慢せずに発作治療薬を服用しましょう。
発作時に起こる体の症状
顔面浮腫4,5)
症状:まぶた、くちびるの腫れなど
顔面の腫れは気道の腫れに移行し、窒息を引き起こすことがあります。
消化管の浮腫4)
症状:腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など
腹痛はしばしば激烈です。HAEでは、腹部CTや超音波検査で、腸の一部に腫れを認めます。
四肢の腫脹5,6)
症状:皮膚の腫れやむくみなど
一般的に、足より手や腕に好発します。
上気道の浮腫5,6)
症状:声がれ、声の低音化、嚥下障害、絞扼感(締め付けられるような圧迫感)、息切れ、息苦しさなど
気道の腫れは窒息につながる可能性があり、迅速な対処が必要となります。のどに違和感がある場合、発作治療薬を処方されている方はできるだけ早く薬を使用して治療しましょう。
上気道の浮腫が起きた時は、薬の使用にかかわらず、すぐに救急車を呼ぶなどして医療機関を受診するようにしましょう。
- 4) 堀内孝彦 他. 補体. 2023;60:103-131.
- 5) Bork K, et al. Am J Med. 2006;119(3):267-274.
- 6) Ali MA, et al. Clin Exp Gastroenterol. 2014;7:435-445.
HAEを治療するには?
急性発作が起きたらどのように対処したらよいのでしょうか?
発作が起きた時は、お薬を用いて治療を行います。発作が起こってから治療までが早いほど、「腫れ」の症状が早くおさまるといわれています。
発作を起こさないようにするには、どんな治療がありますか。
発作を予防するための治療は「短期予防」と「長期予防」の2つがあります。
HAEと遺伝
HAEは、親から子に遺伝する遺伝性の病気です。
遺伝する確率やファミリーテストについて、ご紹介しています。
監修:
山下 浩平 先生